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2024年6月1日 音楽に生命を与える拍子感の出し方

今日から6月ですね。
誕生月なので6月は何となくうれしくなってしまう私。
同世代の人たちでは「もう誕生日なんか嬉しくない」と言う人もいるけれど
私は元気にまた誕生日を迎えることができたと思うとやっぱりうれしいです。
なので祝ってください!ちなみに4日です!(笑)

とこんな風に浮かれていると夫に
「誕生日は親が生命を与えてくれた日だから
自分が祝ってもらうというより
親に感謝する日だ」と
たしなめられてしまうのですが。
(でもちゃんと毎年お祝いしてくれます)

さて毎月1週目はピアノ上達のためのお役立ち情報をお届けしています。
今回は音楽に演奏を与えてくれてる「拍子感」についてのお話です。

私は時々コンクールの審査員をすることがあるのですが
よくコメントに拍子感のことを書きます。

技術が達者で
表情豊かに歌う気持ちを持っていても
拍子感が感じられないと
魅力が半減してしまい
「これで正しい拍子感があればなあ」と思うことがとても多いです。

なのでここからの解説を
参考にしていただければ幸いです。

「この曲何拍子?」
とレッスンの時に先生に聞かれることはありませんか?

意外と自分が弾いている曲が何分の何拍子なのか意識できている人は少なく
よく弾けているのにつまらなく感じてしまう演奏には
拍子感がないことが多いです。

拍子とは、拍子感とは何なのか
ないとどうしてつまらないのか
どうやって拍子感を表現すればいいのか解説します。

 
まず拍子とは何でしょう?
辞書(デジタル大辞泉)には
音楽のリズムを形成する基本単位。
一定数の拍 (はく) の集まりで、強拍と弱拍との組み合わせからなる。
拍の数により二拍子・三拍子などという。

とあります。

つまりすべての拍は同じ強さではなく
強い拍と弱い拍があるります。
 
例えば2拍子なら1拍めが強く2拍めが弱くなり
1 2 1 2
強 弱 強 弱  と繰り返されて2拍が一つのまとまりとして聞こえてくる。

3拍子なら
1 2 3 1 2 3
強 弱 弱 強 弱 弱
4拍子なら
1 2 3 4  
強 弱 中 弱  
    強        
6拍子は3拍ひとまとめで大きな2拍子とととらえ
1 2 3 4 5 6
強 弱 弱 中 弱 弱
      強
となります。

何拍子であっても1拍目が一番強い拍なので
何拍子かをあらかじめ知らなくても
1拍目の強拍が何拍ごとに巡ってくるかで
人は拍子を感じることができるわけです。

大事なことなのでもう一度書きます。
すべての拍は同じ強さではありません。
拍の強さとは音量というより
重さと理解していただいた方がよいかと思いますが
重い拍と軽い拍の区別がないと
聞いている人は拍子を感じ取ることができず
拍子が感じられないと音楽のノリを感じられず
ノリを感じられないと平板で退屈と人は思ってしまうのです。

ロックやポップスだと皆さん聞いていてノリノリになると思いますが
クラシックでもノリが大事。
そしてノリを生み出すには拍子感が必要なのです!

では拍子感を出すためにはどうすればよいでしょう?

まずはどこが重い拍でどこが軽い拍かを理解しましょう。
そのためには
1拍のまとまりを理解することが必要です。

 
拍子記号の下の数字は1拍の音符が何かを示しています。
例えば4分の3拍子であれば4分音符が1拍
8分の6拍子であれば8分音符が1拍ですね。

拍頭にあたるところを表拍、それ以外を裏拍といい
いくつかの例外を除いて
表拍は重い拍、裏拍は軽い拍になります。

1小節に8分音符が6つ並んでいる時
4分の3拍子であれば8分音符二つが1拍の組になるので
拍頭にあたる1,3,5番目の音が重い音になります。
8分の6拍子であれば1番目と4番目の音が重い拍になります。
 
拍子が違えば重く弾くべき音が変わります。
重く弾くべき音を間違えると
違った拍子に聞こえてしまい
曲のあるべき姿でなくなってしまいます。
それくらいどの拍が重くてどの拍が軽いかを
きちんと意識して弾き分けることは重要なのです。

では具体的に重い拍と軽い拍を
どうやって弾き分ければよいでしょうか?
重く強く弾くべき拍の音にアクセントをつけるというのも有効なのですが
アクセントをいちいちつけすぎると
1拍ごと、1小節ごとで音楽の流れが分断されてしまいます。

ベストな方法は
重力を利用することです。

重い拍は重力に従って下向きに
軽い拍は重さがかからないように重力と反対に上向きに弾く。
手首を少しだけ
強拍で下げ
弱拍で上げてみると
タッチの方向が変わり音色も変わります。

モーツァルトのきらきら星変奏曲の出だしなども
1拍目を下向き、2拍目を上向きに弾くことで
表拍と裏拍の音色の違いができて
拍子感を表現することができます。
シンプルなメロディーですがそうすることで平板さがなくなり
生き生きとした表情が出てきます。
 

私は留学していた時に
数年前に亡くなった大ピアニスト
パウル・バドゥラ=スコダ氏のマスタークラスに参加したことがあります。

彼は誰のレッスンでもどの曲のレッスンでもひたすら
「重く、軽く、重く、軽く」と言い続けていました。

重い拍と軽い拍の区別をつけて拍子を表現すること
それがいかに音楽を音楽たらしめる基本であるか
そしていかに皆が(私も含めて)それができていないか(笑)
ということを思い知らされました。

音楽に生き生きとした表情を与えてくれる拍子感を
しっかり意識しながら
練習に取り組んでくださいね。
 

最後までお読みいただきありがとうございました。
明日はとあるコンクールの審査なので西向きに移動中。
拍子感のある魅力的な演奏に出会えるといいなあ。 

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